小売業におけるシフト制度⑤(1ヶ月の変形労働制に設定)

変形労働時間制を見つけた自分が次に取り掛かったのが

適用期間を決めることでした。

前回お伝えしたように変形労働時間制には

(1)1年間

(2)1ヶ月

(3)1週間

のパターンがあり、そのうち1つの期間を選択し、運用する。

ということですが、正直言ってうちの会社としては

 

(2)1ヶ月の1択でした。

 

選んだ理由としては、

  • これまでも1ヶ月単位で出退勤を管理していた
  • 1年間では期間が長すぎて管理できない
  • 1週間では「管理のための管理」になってしまい煩雑になる  

という消去法を中心とした選択で「1ヶ月単位」に決めました。

 

適用期間を設定した自分に課せられた課題は

社員の毎月の所定労働時間を設定することでした。

これがないことには、各店舗の店長がシフト作成ができませんので

取り掛かりましたが、下記の通りあっさりとできてしまいました。

 

    休日数  出勤日数  所定労働時間

4月   9日    21日    168時間

5月   9日    22日    176時間

6月   9日    21日    168時間

7月   9日    22日    176時間

8月   9日    22日    176時間

9月   9日    21日    168時間

10月    9日    22日    176時間

11月    9日    21日    168時間

12月    9日    22日    176時間

1月   9日    22日    176時間

2月   8日    20日    160時間

3月   9日    22日    176時間

    107日   258日     2064時間

 

以上のように所定労働時間を設定した自分としては

あとは、店長に各月の所定労働時間を渡して

月に168時間なり176時間なりの中で、各店舗でシフトを作って

もらえればイッチョあがり!という感覚でいましたが

もちろんそんなに簡単ではありませんでした。

 

これまで、開店時から閉店時のワンシフトしか作ったことがない店長が

急に

「月に176時間の枠の中でシフトを作ってください」

と言われてもどうやって良いか全くわからない・・・

という状況でした。

 

というわけで、

というか、

そうなるのは薄々わかっていましたが、

モデルとなるシフトを作ることにしました。

 

ただ、こういう細かい仕事で、組み合わせていくような仕事って

自分の中では好きだったのでまあ意気揚々と作り始めました・・・が

 

■誤算① 開店時間、閉店時間のパターンが結構多かった・・・ 

 自分が店長をしていた時は、開店10時から閉店20時というパターン

 ぐらいしかなかったのが、この頃には、

 ・開店時間

  9時、10時、10時30分、11時

 ・閉店時間

  20時、21時、22時、23時

 と社会環境の変化とともに特に閉店時間のパターンが増えていました。

 

■誤算② 出勤、退勤時間がバラバラだった・・・

  これも店長の判断で店舗によって出勤、退勤の時間設定が全く

  異なっていたのも誤算でしたね。

  うちの会社では取扱う商品が異なる店舗も多いので、

  それによって出勤時間を開店の15分前に設定する店舗や

  1時間前に社員を出勤させる店舗など全くもって多様で

  退勤時間も同様でした。

 

このような状況を考えると、開店10時で閉店20時の

モデルシフトを作ったところで意味がないことが

わかったので、次の作戦に出ることにしました。

 

シフトパターンを全部洗い出してあとは店舗に作ってもらう

 

ということです。

つまり、

 

シフト① 9:00~16:00

シフト② 9:15~16:00

シフト③ 9:30~16:00

シフト④ 9:45~16:00

      ・

      ・

      ・

と、15分単位で考えられるシフトパターンを洗い出し、

それを店長に組み合わせてもらいながら、176時間/月の

所定労働時間をつくってもらうことにしました。

 

ちなみに、シフトパターンは当時で810パターン程度

作成したのを覚えています。

 

そしてそのシフトパターンを月度で入力していくと

自動的に日別のレイバースケジュールの基となる表が出来上がる

というシフト表を同時にこしらえて、ようやく店長にシフト制度を

説明する各地区の店長会議に赴くのでありました。

 

つづく

 

 

小売業におけるシフト制度④(変形労働時間制との出会い)

部長からシフト制度導入にむけて特命指示をもらった自分は

早速動きはじめました。

 

ただ、「動いた」とはいっても、

  • 社内で有志を集めて特命チームを作るわけでもなく
  • 社外のコンサルに指示をして提案をしてもらうわけでもなく

自分ひとりで顧問契約をしている担当の社会労務士にシフト制度についての

法律と運用について世間や他社の事例を聞いてくる。

といった地味なスタートでありました。

 

またせっかくなので会社から有料セミナーにも行きましたが、

そこでは労働系の弁護士先生から

 

「飲食、小売りの休憩は3時間ぐらいは認められており

 全体の拘束時間を延ばすこともできる」

 

なんていう非現実的な話もあったりして、

なかなか参考にはならなかったですね。

 

そこで結局は自分で労働基準法をひとつひとつ確認することが

手っ取り早いと思い、経済学部出身として慣れない法律を読み込んでいきました。

 

 

そしてやっと出会ったのが、

労働基準法32条に記載してあった変形労働時間制でした。

 

当時のうちの会社は、所定労働時間通りの

「10時~20時勤務の2時間休憩して1日8時間」

というパターンにて勤務していましたが、

前述通り、21時や22時営業の店舗が増加し8時間の労働時間では

まかないきれなかったため、シフト制度を導入する。ということが

背景にありました。

 

そこで、出会った変形労働時間制にはこう記してありました。

変形労働時間制は、労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができます。「変形労働時間制」には、(1)1ヶ月単位、(2)1年単位、(3)1週間単位のものがあります。 

 

一定期間を平均し・・・?

ということは、1日8時間にこだわらなくても良い。ということになります。

その制度に苦しんで、10時間拘束で2時間の休憩し8時間労働

という苦し紛れの社内規定を作っていたうちの会社にとっては

非常にありがたい法律でした。

 

しかも

(1)1ヶ月単位

(2)1年単位

(3)1週間単位

と一定期間を選択できるというのは、

繁閑の波が激しいうちの会社にピッタリでした。

 

 その時の自分の気持ちとしては

「よし!これでうちの会社に合うシフト制度を導入できる!」

と珍しくワクワクした気持ちでいました。

 

ただし、そんな新しい制度を

単純に受け入れる会社ではないことをこのあと

改めて認識することにもなりました。

 

つづく

小売業におけるシフト制度③(特命の指示)

ある日、会社の会議室に総務部長に呼ばれ唐突に

 

「店舗のシフト制度を作ってくれ」

 

と指示を受けました。

当時の自分の役職は、「総務部教育チームマネージャー」というもので

主に、採用から配属⇒育成⇒評価⇒報酬といういわゆるHRサイクルを

担当しておりました。

つまりシフト制度なんていう労務系は全くの畑違いでしたし

興味もなかったので・・・

 

「どうして私がやるんですか?」

 

と今では考えられないですが(笑)、非常にやる気のない質問を

してしまいました。

そこで返ってきた部長の回答が以下の2つでありました。

  • 当初販売部がシフト制度を検討していたがギブアップした
  • 君は店長出身だから現場に則した制度を作ってくれるはず

というものでした。

これで俄然やる気がでました(←単純)

特に、自分の琴線にふれたのは、「販売部がギブアップした」

というくだりです。

 

会社の主要部門である販売部があきらめたような案件を手掛けて

それを制度として立ち上げることができるというのは、販売部を

スピンアウトして会社史上で初めて店長から管理本部に異動した

自分としてはやりがい以外のなにものでもありませんでした。

 

そこで部長に対して、

これから始まる特命業務に武者震いをしながらも

冷静を装いながら

 

「かしこまりました。担当させていただきます。

 私以外のメンバーは誰ですか?」

 

と確認したところ・・・(予想はつきますね)

 

 

 

「ん?ひとりでやってもらうつもりだけど」

 

 

 

まあ、予想はしていましたし、

ひとりでやる方が気が楽なので、

特にひとりでやることには突っ込まずに

 

 

「わかりました」

 

と答え、その日から特命業務第一弾の旅が始まりました。

 

ただし、それはどんでもない旅のはじまりでもありました。

 

つづく

 

 

 

小売業におけるシフト制度②(環境の変化)

前回から、特命業務の1つ目として自分が勤める会社の勤務制度に

シフト制度を導入するというお話をしはじめました。

 

2回目の今日は、会社としてシフト制度を導入せざるを得なくなった

様子をお伝えしていきます。

 

前回お伝えしたようにうちの会社は、

10時開店で、20時閉店、2時間の休憩を挟んで、

「ハイ! 8時間労働ね♪」

という勤務体系をしいていました。

 

その中で、2005年頃まではうちの会社は、小売業の中では「専門店」

という括りになり、主にロードサイドを中心に店舗を展開していました。

しかし、この頃から大手GMSが展開するショッピングセンターにも

テナントとして入ることも多くなってきました。

 

GMSにテナントとして入るメリットは、集客がロードサイドよりも

楽になることが挙げられますが、デメリットとしては家賃と労働時間が

問題になってきます。

 

つまりGMSのテナントに入ると営業時間が長くなっておのずと

労働時間も長くなるという図式が成り立ってしまいます。

当時のGMSは「営業時間を長くして売上を作ろう!」という

風潮であったため、例えば

イトーヨーカドーであれば、本体と同じ23時まで

イオンであれば本体は24時間営業で、テナントは22時まで

などという状況でした。

 

そのような状況の中で、テナントとして入ったうちの会社の

労働時間は、

10時から22時とかが当たり前になってしまい、

いくら休憩時間を2時間取ったとしても労働時間は

10時間を超えてしまい、残業代を支払う必要が出てきたわけです。

 

た・だ・し

 

やっぱりうちの会社は、「残業代」は払いたくなかったんです。

※その理由を記載するのはやめておきます。。。

 

そこで、経営陣が考えたのが、

「シフト制度を取り入れよう\(^o^)/」

ということになります。

 

そこで、うちの経営陣は店舗を管轄する販売部という

部署にシフト制度の制度設計と運用を任せました。

 

ただ、餅は餅屋と言いますか、

販売部は「売る」ことはプロであっても「働き方」に対しては

全く素人であり、現状の2時間休憩という制度の中で、

なんとかシフト制度を導入することができないか。と

思考錯誤をしていたようです。

 

もちろんそんな状況では、制度設計はできるはずもなく、

経営陣は販売部で制度設計をすることをあきらめ、

本来の働き方のプロ?である総務部へ依頼をしてきました。

 

そんなことが会社の一部で執り行われていたことも知らずに

ある日、自分は総務部長に「ちょっといいかな?」と呼ばれました。。。

 

つづく

小売業におけるシフト制度①(当時の状況)

それでは、今回から特命業務の中身について少しずつ書いていきます。

 

最初の特命テーマは「小売業のシフト制度」です。

2005年から06年にかけて実施した内容を小分けにして思い出していきます。

 

そのなかで本日は、当時のうちの会社の状況をお伝えします。

 

当時のうちの会社は、関東から九州あたりに80店舗を展開する小売業であり、

一時の低迷を脱却し、少しずつ上昇気流に乗ろうかとしていた時でした。

 

◆店舗面積 400~700坪程度

◆従業員  社員5名~8名 アルバイト15名~30名

◆業種   比較的専門知識を必要とする小売り量販店

◆営業時間 10時~20時

 

そんな中で問題になっていたのは、従業員の労働時間でした。

アルバイトスタッフに対しては、時間給や8時間を超えた時間外、

22時を超えた際の深夜残業代を支払うことで、滞りなく?運営はされており、

今でいうブラックアルバイトといった話は特にはありませんでした。

 

問題になっていたのは、社員の労働時間でした。

ご存じの通り、従業員の労働時間は

 

労働基準法32条第2項

使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない                  

 

ですよね。

ただし当時の各店舗の社員は、出勤社員の全員が

朝9時ぐらいには出勤し、朝礼や準備をした後に10時に店舗を開店させ、

20時に閉店した後は、閉店業務をした後に夜21時ごろに退勤する。

 

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というかたちで、休憩を1時間挟んで、だいたい11時間ぐらいを

残業代無しで働いていたんですね。

しかも社員はその状態に対して、なんとなくの不満はありつつも

「文句を言っても変わらないしね」ぐらいの感覚で働いていました。

 

では会社の規程がどのようになっていたかと、

  1. 10時から20時を勤務時間とする
  2. 休憩は2時間とする

という2本柱でした。

簡単にいうと、営業時間10時間で休憩が2時間で残りの8時間で

ピッタリ残業代を支払わなくても大丈夫♪ という内容でした。

 

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つまり会社の規程は

営業前後の開店準備や閉店処理の時間が勘案されていなかったことと

現実的には無理な2時間の休憩を取得するということで、残業代を回避

していたことが問題ではありました。

ただ、現実として一部の社員を除いて

声高に「問題だ」ということが言われることはありませんでした。

 

ちなみに本社機能の労働時間は、

◆勤務時間 9:30~19:00

◆休憩時間 90分

という体系であり、世間からするとなかなかありえない労働時間ではありますが、

店舗の労働時間からすると恵まれていたので、それこそ文句を言う人は皆無でしたね。

 

ただし、そんな勤務体系も社会環境の変化に伴い、

徐々に変更をせまられる事態になってきました・・・

 

つづく

 

特命業務リスト

さて、前回から今までの特命業務を

これまでの社会人生活の振り返りとしてブログにしたためようと決めました。

 

というわけで今回は、これまでにどんな特命業務を遂行してきたかを

リストアップしていきたいと思います。

 

その前に、改めて特命業務の基準を設けたいと思います。

  • ゼロから100まで自分ひとりでやった
  • 6か月以上の長期的なスパンで実施した
  • ホウレンソウは上司にして、資料提供などは他のスタッフに依頼した
  • 会社として後にも先にも1回だけという業務(←これ大事)

そんなところになります。

 

では、特命業務のリストアップになります。

 

1.労務管理でシフト制度を導入

 実施概要:開店から閉店まで勤務する店舗労働にシフト制度を導入し

      従業員の労働環境の改善と法律的な違反リスクを回避した

 特命期間:約2年間

 実施成果:長時間営業に耐えうる労務管理として10年以上、継続し

      運用されており、長時間労働に対する問題が解消された

 

2.確定拠出企業年金を導入

 実施概要:適格退職年金が平成24年3月に廃止になるに伴い、

      新企業年金への移行業務を担当し

      ・確定拠出企業年金(DC)25%

      ・確定給付企業年金(DB)75%

      という新制度を導入した。

 特命期間:約1年半

 実施成果:会社の今後想定される退職給付債務(PBO)の増加を

      25%削減し財務負担の軽減を図った。またリーマンショック後の

      2009年4月制度開始であるためDCの個人の運用が概ね好調であり

      社員から比較的感謝されている。

 

3.創業者の息子の育成係

 実施概要:創業者の息子が中途入社するにあたり、店長になるまでの期間を

      育成係として担当し、無事店長レベルまでに育て上げる

 特命期間:約1年半

 実施成果:当初は1年で店長。という話であったが、結果的には1年半を

      かけて店長に昇進し無事任務は終了。ただし紆余曲折の末、

      現在は自分が部長として、息子は常務として自分の上司を

      やっております。

 

4.公正取引委員会対応

 実施概要:下請法違反の疑いがあるとして会社に調査が入り、前任者では

      手に負えなくなってきたので、当時法務・コンプライアンス室長

      だった自分に引き継がれた。

 特命期間:約1年2ヶ月

 実施成果:公取への必死の言い訳(?)もむなしく、「勧告」命令が下り

      有名企業としてTV,新聞各社の取材を受けることになって

      しまった。社内としてはコンプライアンス意識の向上には

      十分につながった。

 

5.某企業と弁護士を立てての紛争

 実施概要:システムの構築を依頼していた企業が「できない」と白旗を

      あげたため、日本一の弁護士事務所を立てて紛争をした。

 特命期間:9か月

 実施成果:予想を上回る賠償額を勝ち取る。 

 

      

パッと思い浮かぶのはこのあたりになります。

もしかしたらもっと出てくるかもしれませんが、また思い出したら

リストアップします。

 

それにしても全般的には管理系の内容になるとはいえ、

よくこんなにも様々な特命を任せてもらえたな。と思っています。

 

それでは次回からはひとつずつを詳しくご紹介していきましょう。

 

それでは!

社会人22年目のスタート

2016年の4月が始まってもう3週間程経つ訳ですが、そういえば1995年に社会人になってかれこれ21年を過ぎて、22年目に突入していました。

 

今風に言うと、Fラン大学出身にも関わらず、まずまずの努力とうまく勘所を働かしたおかげで上場企業の部長という役職もやらせてもらっているので、ここはひとつ子供のためにも、社会のために少しでもなればと、これまでを振り返ろうと思い、筆を取りました。

 

ただ、振り返るとはいっても、

  1. 時系列に振り返る
  2. 時系列を逆に振り返る
  3. 仕事毎に振り返る
  4. 徒然なるままに振り返る

などがあるかと思いますが、3.をメインに4.もうまく絡ませながら書いていこうと思います。

 

で、私がどんな職種をやってきたかというと

  • 店長(うちの会社は小売業なので)
  • 人事のマネージャー(主に研修・採用・人事制度・特命業務など)
  • 法務・コンプライアンス室の室長(ここでも特命業務2つ)
  • お客様サービス部の部長(イマココ)

 

ざっとこんな感じですが・・・

あらためて気になるのは「特命業務」ですね。

で、特命ってなんだ?ということですが、

特に

社長とか本部長に呼ばれて「特命だ」と言われたわけでもなく

どこかのドラマみたいにエロい話につながったわけでもなく

ただ単に、

 

 

他にやる人がいなかった・・・

 

 

というのは謙遜で

自分では、

 

 

 

他にできる人がいなかった・・・

 

 

 

と思ってやっていました。

なので、ここでは今ブログを書いていて思いつきましたが、

いままでやってきた「特命業務」について書いていこうと思います。

 

では次回はどんな特命を遂行してきたかをご紹介いたします。

 

我ながらちょっとワクワクしてきました。