小売業におけるシフト制度⑨(残業代を減らす!)
前回のブログで専務から
「とにかく膨れ上がった残業代を減らせ!」
と指示をされて取り掛かったことは
まずは業務の棚卸でした。
- 誰が何をやっているのか
- 何の業務にどれだけの時間がかかっているのか
などを調べることとしました。
ただし・・・
当時のうちの店舗では、
まともなワークスケジュール予定表や
それに対する実績管理などもしているわけではなかったので、
ボタンひとつで数値が出てくるはずもなく、
というようなA5用紙ぐらいのシートを自分でこしらえて、
標準的な売上の店舗を2店舗ピックアップして(←店長の協力体制も大事!)
2ヶ月程度、社員・アルバイトスタッフ全員に手書きで記入していただきました。
そして2ヶ月の業務棚卸をした結果は・・・
結果① 社員が単純な作業労働をしている
結果② アルバイトスタッフへの指示が不明確
結果③ 「接客」の時間が極端に少ない
という課題が見えてきました。
それに対してそれぞれの対策を下記の通り実施してみました。
課題① 社員が単純な作業労働をしている
この課題に対しては、
社員の自分の「時給」を認識してもらうことにしました。
社員は当然のように「固定給」でしたから、
自分の業務を時給換算にしたことがなかったので、
それをまずは伝えました。
例を挙げると
・基本給が250,000円の社員Aがいます。
・250,000円を平均所定労働時間の173.3時間で割ります。
・250,000 ÷ 173.3 ≒ 1443円/時
・時間外(残業時)の係数である1.25を1443円に掛けて
・1,443円 × 1.25 = 1,807円
「あなたが1時間残業をすると1,807円の人件費がかかります」
と伝えます。
次にアルバイトの時給を提示します。
・アルバイトの平均時給は850円です。
そして比較してみます。
・社員がやっていた1時間分の単純な作業労働をアルバイトにお願いします。
・その時間給は1,807円-850円=957円浮きます。
・もしくは社員1人分の残業代で、2.1人時分のアルバイトが使えます。
こんな単純なこともこれまでは認識していなかったので、
ひとつひとつ丁寧に具体例を交えながら伝えていきました。
課題② アルバイトスタッフへの指示が不明確
この課題は、ワークスケジュール表が機能していないことが問題でしたので
それをどのように活用するかを理解していただくことに注力しました。
ちなみにワークスケジュール表ってあらためて何か言うと・・・
従業員を曜日別、時間帯別の交替予定表(ワークシフト表)に割り振り、それぞれの作業内容を指示(作業割当)した勤務予定表のこと。
という定義ですが、
当時の変形労働時間制を導入した店舗のワークスケジュール表は
こんな感じでした・・・
これは、
特に作業を割り当てることもない、ただの「勤務時間表」でした。
つまりこの状態でなにが問題になるかというと、
という悪循環が発生していました。
それの対策としては、
ワークスケジュール表に割り振る
ただし
「人」に「作業」を割り振るのではなく、
「作業」に「人」を割り振るという
考え方を店舗のみなさんに伝えました。
これまでは、
アルバイトA:8時間 ← 荷受け、商品出し、接客
アルバイトB:8時間 ← 荷受け、商品だし、接客
アルバイトC:6時間 ← 商品だし、接客
というイメージでしたが、
今後は、
荷受け :11時間 ← アルバイトA:6時間,アルバイトB:5時間
商品だし:7時間 ← アルバイトB:2時間、アルバイトC:5時間
という考え方にしたわけですね。
そうすると、
【前】アルバイトA:8時間 アルバイトB:8時間 アルバイトC:6時間
【後】アルバイトA:6時間 アルバイトB:7時間 アルバイトC:5時間
とそれぞれ労働時間が減り、人件費を削減できる。
という計算が成り立ちました。
これについては、店長からは
Q.「いや~、言いたいことはわかるけど、
時間を減らすとアルバイトから不満が出るでしょ~」
A.「では、社員の単純作業労働を振って、
アルバイトの労働時間は捻出してもいいですよ。
そのかわり、社員の残業は『無し』でお願いしますね」
Q.「作業の時間って事前にわからないけど、どうするの?」
A.「荷物の入荷量とかは、
事前にバイヤーや物流センターに聞いてもらえればわかりますよ。
あとは、店舗で算出して計画してもらえれば結構です。」
といったやりとりはありましたが、
なんとか(うまく)、理解してもらいました。
そして運用としては、
ワークスケジュール表に
事前に必要な作業を洗い出しそこにアルバイトを割り当てていく。
という流れを実施し
その場しのぎの社員指示を少なくすることで、均質的な
アルバイトの業務作業が実現することができました。
課題③ 「接客」の時間が極端に少ない
小売業としてこれはマズかったのですが、上記の
課題① と 課題② を勘案すれば、おのずと答えは
出てきました。
課題① 社員が単純な作業労働をしている
解決策 アルバイトが単純作業労働を実施する
つまり 社員が余る
課題② アルバイトスタッフへの指示が不明確
解決策 ワークスケジュール表を有効に利用して社員指示を少なくする
つまり 社員が余る
課題③ 「接客」の時間が極端に少ない
解決策 余っているスタッフが実施する
つまり 社員が「接客」をする
という良い流れができ、
社員の接客により接客のクオリティも上げながら
作業については、アルバイトにより費用効率を図り、
社員のムダな業務を無くすことで、
肝心な残業代も徐々に減らしていくことが出来ました。
ただし、そんな自分からの啓蒙活動ではなく、
店舗としても、
『残業<帰宅』
という文化があったため、
今まで10時間で実施していた業務を8時間で実施する!
というように、人間として単純に能力を上げていただき、
残業代を減らしていくということが要因としては一番
大きかったかと思います。
そんなやり取りを1年ほどふまえながら、
はじめての特命業務である変形労働時間制
所謂シフト制度の導入が終わりをつげようとしていました。
つづく