小売業におけるシフト制度⑧(専務からの指摘)

総務部長から「ちょっといいかな」と呼ばれて

告げられた内容は、

 

「専務からこの変形労働制度は『失敗だ』と言われてしまった。

 俺も(←総務部長)いろいろ言ってみたけどムダだったよ」

 

とのことでした。

ちなみに専務が失敗と言っている理由は下記の通りです。

 

  • 時間外残業ばかり余分に出て、会社としてはメリットがない
  • スタッフが働きやすくなるどころか制度によって混乱が生じている
  • 社員の就業時間が短くなることでお客様サービスが低下する

 

以上のような内容でした。

 

僕は口には出さなかったものの、頭の中ではこう思っていました。

 

 

「そりゃ、そうでしょう」

 

 

と。

  • 今まで出ていなかった時間外は出てあたりまえだし
  • 制度導入当初は混乱するのは当然だし
  • 長時間労働の方がサービスのクオリティは下がると思うけど・・

 

という思いを巡らせながら部長の話を聞いていました。

 

ではここで、このブログ初登場の専務についてご紹介します。 

 

  • 我が社を全国展開できる会社にした立役者
  • 創業者も絶大な信頼をしている営業系のトップ
  • 自他とも認める次期社長候補

 

そんな感じで、誰もが恐れる実力者です(^^;

 

そんな実力者である専務から指摘を受けた今回の制度は、

正直に言うと、ひとたまりも無くなってしまう・・・

と言うのがこの時点の状況でした。

 

ただし、総務部長が自分に対して一通り説明をし終わった瞬間に

僕は自分でも思いもよらなかった言葉を発しました。

 

 

 

「自分が専務のところへ行って説明してきます!!」

 

 

 

 なぜ、そんなことを言ったのかはわかりませんが、

総務部長の話を聞きながら、

 

(専務だろうが、何だろうが、勝手なことを言うな!)

 

という思いはこみ上げてきていましたし、

なによりも今回の変形労働時間制の導入は

営業系から「何とか頼む!」と言われた

特命案件でしたし、

なによりも自分としても苦労をしながら導入まで

こぎつけた制度をひとりの役員が文句を言ったところで

壊されるわけにはいかない!

 

(これでゼロに戻ったらうちの会社の労務管理はダメになってしまう)

 

という思いなどが募ってそのようなセリフが出たと考えられます。

 

そんなこんなで相当頭に血がのぼっていた自分は

資料もなにも持たずに

 

「ちょっと待てっ!」 ←(ドラマみたいだけどホントに言ってた)

 

という総務部長の制止も聞かずに

 

営業本部のあるフロアへ行き、

 

”ズカズカ” という足音を立てながら、

 

専務の机の前まで来ました。

 

そして

 

” ドンッ ”と両手で専務の机を叩くことまでは無かったものの

 

「異様な雰囲気で専務と対峙している奴がいる。」という

 

周囲の目線をもらいながら、専務に対して話始めました。

 

以下:当時の逐語録

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自分「変形労働制についてですが・・・」

 

専務「あ~、あれはダメだろ!」

 

自分「どうしてですか?」

 

専務「残業代ばかり出て、効果がないだろ!」

 

自分「残業代が出ているのは、今までの膿を出しているんです」

 

専務「膿?」

 

自分「膿です!

   これまでは法律に対して触れるような労務管理であったので

   今回、労務管理を変更したんです」

 

専務「それにしても制度を変更して、残業代が出るのは

   うまくいっていないということだろ!

   新しい制度でも残業代が出ないようにするべきじゃないのか?」

 

自分「制度の導入当初はどうしても出てしまいます。

   ただし、10月と11月を比べてみると残業代は減っています」

 

専務「じゃあ、その残業代を早くなくせ!」

 

自分「導入後はそれが重要ですから、これから実施します」

 

専務「また聞くからな」

 

自分「わかりました。失礼します」

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という会話が、お互い顔を若干赤らめながら話した内容になります。

 

営業の社員からすると専務に対してあんな風に啖呵をきって

話している社員をみるのは初めてだったようで、

専務の机の周囲の社員が仕事をしている風で、

耳をそばだてているのが手に取るようにわかりました。

 

また総務部へ戻ってきてからは

総務部長からは

 

「大丈夫だったか?」

 

という猛獣狩りにでも行ってきたような言葉を掛けられ

 

「とりあえず、言ってきました!」

 

と力強く答え、

 

「とにかく、残業代を減らせ!ということなので減らしにかかります」

 

と報告をし、総務部長もホッと胸をなで下ろしていました。

 

 

 

 

以上が専務との顛末になります。

今回の教訓としては、

 

  信念を持っていることは押し通してみる

   結果としては今回は、押し通すことができました。

   もちろん条件としては、相手の度量の大きさだったり

   ロジカルな説明能力だったりは必要かと思いますが、

   何よりも今回は、珍しく「熱意」がモノを言ったと思います。

   真剣にやった仕事に対しては、誰が何を言おうとブレない

   信念が必要かと思いますし、ブレてしまうようではまだまだ

   信念が足りないのではと思います。

   組織ですから、あの場で専務に「却下!」と言われれば

   引き下がりましたが、その前に「押し通す」ことは誰でもできると

   思うので、自分の価値を確認するためでも重要な行動でした。

 

  資料は必要以上に持っていけ!

   今回、失敗したのは、資料をひとつも持って行かずに

   まさに「身ひとつ」で専務のところに乗り込んでしまったのは

   大きな反省です。たまたま資料の要求がなかったり、

   大まかな内容は頭の中に入っていたので、事なきを得ましたが

   今であれば、これまでの変形労働制度の資料を両脇一杯に

   抱えながら突撃したと思います。

   これは弁護士から教えてもらったテクニックで、

   「相手よりたくさんの資料を ”ドンッ”と机の上に置くだけでも

    こっちはしっかりと調査しているんだ!というアピールに

    なりますからね」

   と日本一の弁護士数を抱える某大手弁護士事務所の方が

   おっしゃっていました。それを聞いて以来、取締役会での

   発表がある際には、まさに「必要以上の資料」を持ち込んで

   説明をすることが習慣になりました。

   資料は常に手元に置いておきましょう!

 

というわけで、その日はなんとなく興奮覚めやらぬ中終わるとこでしたが、

実はとんでもない後日談というか当日談があるのです。

 

総務部はたまに、役員の運転手をすることがあります。

専任の運転手ももちろんいないですし、

タクシーを使うという文化もありませんでしたので、

本当に稀ではありますが、運転手をします。

 

もうおわかりですね・・・

 

 

 

 

なんとその日に専務が取引先と会食をするための会場まで

僕がお送りすることになってしまったのです。

 

もちろん、総務部長も代わりの社員を探してはくれましたが

結局見つからず、自分が行くことになってしまいました。

ちなみに他の役員はおらず、自分と専務のふたり旅でした・・・

 

道中はだいたい25分ぐらいあります。

 

さて、どうしたものか・・・

 

と思案していましたが、乗り込んできた専務は

自分が運転手であることに若干驚いてはいましたが

さきほどの変形労働制度の話を遠慮なくしてきました。

 

 

以下:当時の逐語録②

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専務「それにしてもそんなに残業代が出るっておかしいだろ」

 

自分「あの・・本当に膿として隠れていただけで、

   今までがマズかったんだと思います」

 

専務「今まではそんなにマズい制度だったのか?」

 

自分「あのままでは法律には引っかかるか、

   訴える社員はいたと思います」

 

専務「何とかならんのか?」

 

自分「これからなんとかします」

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という話を繰り返しながら道中をなんとか過ごしました。

昼間に机を挟んで対峙していた時よりもさずがにお互い

トーンは下げて話すことはできましたし、なによりも

これまでの現状とこれからやっていこうとすることが

あらためて説明はできたので、最初はどうなるかと思いましたが、

結果としては今回の運転手役は非常にタイミングが良かったです。

 

という形で、なんとか

  • 店長
  • 組合
  • 役員

と納得?(説得)させていきながらシフト制度のレベルアップを

図っていきました。

 

つづく