小売業におけるシフト制度⑦(導入開始の状況)

前回のブログでは新しく導入する変形労働時間制度を

店長に説明(説得?)するところまでをお伝えしましたので、

今回はその続きです。

 

店長への説明は悪戦苦闘しながらもなんとか終了し

組合にも説明を完了し(←こちらはスムーズでした)

2006年10月より変形労働時間制を導入いたしました。

 

店舗には改めて下記の点について徹底するようにつたえました。

  • 開店から閉店までの勤務ではなくシフトで勤務すること
  • 1ヶ月の所定労働時間(ex.176時間)をもとにシフトを作成する
  • 事前設定した1日の所定労働時間を超えたら「時間外」をつける

などが主な内容になります。

 

それに対して店舗からの質問は

 

 Q.実質として社員の実労働時間が減ったがその分は残業して良いか?

 A.単価の安いアルバイトにて補ってほしいが、どうしてもの場合は

   残業して時間外勤務を申請してください

 

 Q.うちの店は1年間の繁閑の差が激しいので、

   1年間の変形労働制を取り入れても良いか?

 A.会社として1ヶ月の変形労働制を実施しますので、

   1年間の変形労働制は認めません

 

 Q.シフトを作成する際に、1日の時間の最低労働時間はあるか?

   1日2時間勤務でも良いか?

 A.法律上は問題はないが、1日2時間の勤務でも問題ないという

   合意を従業員に確認しなければならない

   (あまり良くない・・・)

 

などの問い合わせがありましたが、いずれも変形労働制に対する

前向きな質問であり、店長への事前説明会であったような

 

 「環境も整っていないのにムリだろ!」

 「労働時間が少なくなるからお客様に迷惑がかかる!」

 「店長に『死ね』っていうつもりか!」(←耳にこびりついてる)

 

というボイコット、後ろ向き系な意見・質問はいざ導入すると

ほとんどありませんでした。

 

やはり店長自身も、

今まで長時間労働を部下スタッフに強いていたことがあり、

そのうしろめたさから、やらざるを得なかったのでしょう。

 

そして導入した10月はあっという間に終わり、

11月1日に全店舗分の時間外の集計を実施しました。

結果としては・・・

 

 

前年の10月に比べて約20倍の時間外が計上されました。

 

 

はっきりいうと、総時間外は全く予想はしていませんでした。

ただし、目の前にある時間は、非常に膨大な時間が記されていましたし

視点を変えてみると、これだけの多くの時間外がサービス残業として

潜在していたと思うと、さずがにビビりました。

 

ただし、集計した時間外は事実として上司に報告しなければならないので

総務部長と担当役員に対して説明をしました。

反応としては、出てきた数字にはショックを受けていましたが、

 

「これまでの膿が出たのだからしょうがない。

 今後はこれを改善していけば良い」

 

というコメントをもらったので、胸をなで下ろしましたが、

 

「営業系の役員に報告するのはもう少し待ってからにしよう」

 

という話もありました。

実は、総務部長も担当役員も当社のプロパーではなく

所謂、社内の主流派ではありませんでした。

そのためどうしても慎重な言動があり、

このままこの結果だけの数字を

営業の役員やオーナー社長に報告したらマズイ雰囲気になるだけでなく

最悪のケースとして、

今回の変形労働時間制がつぶされてしまうと思ったのでしょう。

 

いずれにしても僕としてもこのままの数字を営業系の役員に

報告するのはやっかいだったので、

「わかりました」

と同意しました。

 

 

そして、11月に入ってからも店舗からは特に大きなクレームもなく

順調に変形労働時間制は浸透してきている様子で、

反対に

 

 「うちの店舗ではこんな施策で時間外を削減した」

 「シフトパターンを810から860に増やしたらシフトが組みやすくなった」

 「シフト入力表とワークスケジュール表の連携をもう少し良くしてもらえると

  シフト作成の効率が高まります」

 

などという非常に前向きな意見が多く挙がってくるようになり

それを社内のイントラネットにアップしながら少しずつ浸透を図っていき、

少しでも時間外が少なくなるように努めていきました。

 

そして、導入後2ヶ月経った、11月も終わり、

12月1日に11月分の時間外の集計を実施しました。

結果は・・・

 

 

前年の11月と比較して、20倍まではいかなかったものの

相変わらず、膨大な時間外が社内の労務管理のサイトには刻まれていました。

 

 

ただし、10月の時間外と比べると総時間外の数字は

ほとんど同じであったことは大きな収穫でした。

つまり

  • 10月より11月は忙しい
  • 少ないながらも毎年時間外は10月から11月には増える傾向がある

という条件ながらも、

今回は10月と11月の時間外がほぼ同じ推移だったのは

少しずつでも店舗の時間外削減に対する対策が効果を表しているのだな

と感じており、自分としてはやっと変形労働時間制を導入した手応えを

つかみはじめていました。

 

そんな中、総務部長が青白い顔をして自席に戻ってきて

「ちょっといいかな?」

 と僕を呼びました。

 

まさに

 

不吉な予感がした。馬が死んだ。インディアンの太鼓もやんだ。

静かすぎる。僕は小指の先でこめかみを掻いた。   

 

 と「ダンス・ダンス・ダンス」で主人公が牧村拓に

「ユキの面倒を見てもらえないだろうか」

と言われた時のフレーズがふと頭をよぎりました。

 

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

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とにかく嫌なイメージしかしないながらも

 

「なんでしょう」

 

と平常心を装い総務部長の机に向かいました。

 

つづく