小売業におけるシフト制度⑥(店長会議での説明)

1ヶ月の変形労働時間制という仕組みと

810パターンのシフトを携えて、

各店舗の労務担当者である店長のみなさんに制度内容を説明に行きました。

 

当時のうちの会社は、比較的日本全国に店舗を展開しており

店長会議も東京、名古屋、大阪、広島、福岡と主要都市で

そのエリアの店長を集めて3時間程度説明会を開催しました。

 

説明会の内容は

  1. 当社の労務管理状況と法律的な問題点
  2. 現在の状況を改善するための新しい仕組み←変形労働時間制
  3. 新しい仕組みの具体的な運用方法
  4. 質疑応答

という流れでそれぞれが45分程度でありました。

 

最初の1.当社の労務管理状況と法律的な問題点

話し始めた際の反応としては

 

「そうそう!そうなんだよ!」

「俺も法律的に問題があると思ってたんだよな~」

「やっぱり、店長出身の本部社員(←僕の事)は自分たちの味方だよな~」

 

といった雰囲気で概ねウェルカム感が漂っているんです。

というよりもこれから始まる新しい制度に対する期待満々!

といった目で僕を見ていました。

 

次に2.現在の状況を改善するための新しい仕組み←変形労働時間制

を説明している際の反応としても

 

「なるほどねぇ~。やっぱり今のままじゃだめだよね!」

「うちの会社もこういう新しい制度を導入する必要があったんだよ!」

「これでやっと長時間労働から解放されるわ」

 

という話が1.2.が終わったあたりで挟んだ休憩中にコメントを

もらったりしてまだまだ高評価という雰囲気だったんです。

ここまでは・・・

 

そしていよいよ、3.新しい仕組みの具体的な運用方法

の話をし始めると、

 

「はあ?810パターンのシフトを俺たちが組み合わせるの?」

「労働時間が少なくなった分の業務はどうするの?」

「残業代が増えると思うけど、大丈夫なの?会社的には?」

 

と、今まで散々、これまでのやり方を非難し、新しい制度に対して

好意的に接してきた店長たちも、具体的な話になると手のひらを返したように

新しい制度を批判してきました。

所謂、

「総論賛成、各論反対」

というパターンにはまってしまいました。

 

そして、最後の4.質疑応答 ではいよいよ怒号が飛び交うようになります。

 

「結局会社が作る制度はろくなもんじゃない!」

「準備期間もろくにないのに導入ありきだ!」

「店長は死ねっていうことか!」

 

といった状況でした。

少し、状況を整理すると、今の店長は残業代が対象にはなっていますが、

当時の店長は「管理者」として残業代が対象にはなっていませんでした。

つまり、一般の社員の労働時間が変形労働時間によって少なくなることで

業務のしわ寄せが自分たち(店長)に全てくる。と思っていたので、

 

「店長は死ねっていうことか!」

 

といった発言になったんですね。

 

また当時のうちの会社は、「残業をつける」ということが

「悪」ということになっていたので、

同様に一般の社員に対して残業を「つけられない」から

その分自分たちが「働かなければならない」

という発想になったのでしょう。

 

そしてこのような店長たちの反応に対して

自分としては下記のポイントを重点に繰り返し説明しました。

 

  • 今の勤務体系はサービス残業が横行し法律上問題である
  • これから時間外に対しては堂々と残業代をつける
  • 今やらなければ100年経ってもできない

これまでの自分であれば、なんとなくその場を

「では少し本部で検討しまた回答します」

などと逃げていたところでありました。

 

しかし今回の制度変更は自分に回ってきた

「特命業務」であり、なんとかやり遂げなければならない!

というまさに使命があったので、毅然とした態度で

店長に対しては説明をして少しでも理解をしていただくよう

努めていました。

 

そんな形で、なかなか理解を得られないながらも

強気の態度で説明し、くたくたになりながらも家に帰っていたのを

思い出されます。

そこではその年、生まれたばかりで、スヤスヤ寝ている娘に対して

仕事の愚痴を聞いてもらっていたのが、唯一の安らぎでした(笑)

 

そして、組合にも了承を得て、いよいよ制度を導入する運びとなり、

特命業務を一区切りつけたことでホッと一息をついていましたが、

当然のように導入後も波乱の舞台が待っていました・・・

 

つづく